学部・研究科からのお知らせ

    本研究科の院生が「感染症と考古学」研究発表会で研究発表を行いました。

    2022/03/22 トピックス

    長崎県をはじめ、多くの都道府県でまん延防止等重点措置が取られる中、2022年3月5日に「感染症と考古学」研究発表会(長崎県考古学会共催)がオンラインで開催されました。半日にわたる研究発表会には、時節もあってか研究者をはじめとした80名にものぼる人々が参加しました。

     

    今回のテーマは、「疱瘡墓」でした。聞き慣れない言葉と思いますが、天然痘で亡くなった人々の墓です。江戸時代、大村藩などでは天然痘ウイルスに感染して発病すると、奥深い山の中や辺鄙な海岸や離れ小島に強制的に隔離され、死後も隔離されたまま埋葬されました。その墓が疱瘡墓です。今回はこの疱瘡墓の様相から当時の感染症に対する取り組み、感染症が生み出した差別や排除について考えた研究会でした。

     

    研究発表会では、本学部・研究科の野上建紀教授による趣旨説明の後、近世石造物研究の第一人者である関根達人教授(弘前大学人文社会科学部)による基調講演が行われ、県内外の研究者が大村・五島・天草地方の疱瘡墓について研究成果の発表を行いました。

     

    そして、本研究科博士前期課程の賈文夢さんも「長崎・天草地方の疱瘡関連石造物」と題して発表を行いました。長崎・大村・五島・天草地方に分布する疱瘡死者の供養塔や疱瘡墓を集成して分析しながら、その地域性と多様性を明らかにしました。発表後には活発な質疑応答や情報提供が行われました。

     

    感染症に伴う隔離は、差別と排除を生み出します。それは江戸時代も現代も変わらないようです。人知れず埋もれた疱瘡墓を過去の悲哀の物語とするだけではなく、現代の教訓として生かす必要があります。疱瘡墓の研究は過去のことにとどまるものではありません。

     

    そのため、今回の研究発表会については、参加者の方から「考古学が新しいステージに突入したという印象を抱いた」、「テーマが現代の状況に合いすぎで引き込まれました」などといった感想も届きました。現代的な課題と離れたテーマを扱うことの多い印象のある考古学ですが、今回は新型コロナウイルスの感染流行によって、数百年隔てた人々の感染症との闘いについて現実感をもって理解し、共有することができました。

     

    「疱瘡墓」を修士論文の研究テーマに選んでいる賈さんは6月に開催予定の長崎県考古学会の総会でも長崎・天草地方の疱瘡墓について発表予定です。賈さんの疱瘡墓の研究は、長崎大学広報誌Choho vol.78(冬季号:2022年1月発行)でも紹介されていますので、関心のある方はぜひご覧ください。
    【Choho】https://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/guidance/kouhou/publicity/file/c078-3.pdf

     

     

     

     

    写真1 関根達人教授の基調講演「疫病と石造物」のスライド

    写真2 中山圭さん(天草市文化課)による「天草における疱瘡対策」のスライド

     

    写真3 賈文夢さんによる「長崎・天草地方の疱瘡関連石造物」のスライド

     

    写真4 資料を手に発表を行う賈文夢さん

     

    写真5 基調講演者の関根達人教授(奥)と石造物の現地調査を行う賈文夢さん

     

     

    写真6 研究発表会の案内チラシ

     

     

     

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