学部紹介

    教員紹介

    佐藤 靖明

    アフリカの人びとと自然のかかわりを探る

    佐藤 靖明(さとう・やすあき)
    1976年福島県生まれ。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科単位取得退学。博士(地域研究)。専門は、民族植物学、生態人類学、アフリカ地域研究。大阪産業大学生活環境学科講師・准教授、同環境理工学科准教授を経て、2022年4月より長崎大学多文化社会学部。主な著書に、『ウガンダ・バナナの民の生活世界』(2011年、松香堂出版)、『食と農のアフリカ史』(共著、2016年、昭和堂)がある。
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    Q.ご自身の研究を紹介してください。
    バナナの人類学とアフリカ地域研究
    「人と植物の関係論」と「アフリカ研究」という二つの軸で研究をしています。人類学が中心ではあるのですが、地理学と地域研究を学んできたこともあり、文系・理系を問わず多くの分野に関心をもっています。
    植物の中で注目してきたのがバナナです。バナナは人間と高い親和性をもち、世界で広く栽培、利用されています。2001年より、東アフリカ・ウガンダのバナナを主食とする人びとが暮らす村に住み込み、バナナと深くかかわるかれらの生活や生き方を調べてきました。そこから研究が派生し、東南アジアに起源したバナナがどのようにアフリカに伝わり広がったのかといった問題や、アフリカの農業や食の問題についても考えをめぐらせています。近年では、アフリカに加えて、パプアニューギニアで共同調査をしたり、日本のバナナ栽培について生産者の方に聞いて回ったりしながら、人類史におけるバナナの意味や、バナナに反映される人間文化の特質を探っています。
    アフリカでは、フィールドワークを続ける中で、たくさんの人びとの悩みとも対峙してきました。今とくに焦点をあてているのが、てんかんの一種である「うなづき症候群」です。この病気は主に内戦が行われていたウガンダ北部で流行したのですが、原因や治療法が不明で、患者の世帯は経済的な困難や差別にも直面し、問題解決の糸口が見えない難しさがあります。アフリカの多くの課題が詰まったこの病気に対して、農村生活を調べてきた経験を生かしつつ、医療、保健などの専門家とつながりながら、地域社会に根差した支援の方法を模索しています。

    【PHOTO】監修した絵本『バナナ(知りたい食べたい 熱帯の作物)』農山漁村文化協会

    Q.どのような授業になりますか。
    専門科目「地域生態論」
    地域の特徴や動態を把握するための知識や方法を学ぶ授業です。「地域」のとらえ方は立場や見方によってさまざまですが、ここでは「食」を切り口にしたアプローチを説明します。自然環境を基盤とした人びとの生活があり、その上で社会・経済・政治的なしくみがつくられていると考えたとき、食べものはそれらのどの領域にも関係しています。人と動植物の関係としての食を出発点にして、食文化にかかわる理論を用いながら、アフリカなどの地域への深い理解に至るための思考法を磨いていきます。

    【PHOTO】ウガンダのフィールドワーク中、住み込み先の家の方と。

    Q.メッセージをお願いします。
    学生の頃、どう生きていったらいいのかよく分からず悶々とする日々が長く続いたのを思い出します。いろいろ模索した後に、アフリカの人びとと出会い、またバナナと出合っていくうちに、自分と違う世界のことを知りたいという気持ちが湧き上がっていて、いつの間にか悩みから解き放たれていることに気づきました。そのような機会を与えてくれるフィールドワークは、研究としてだけでなく、プライベートな面でも大きな可能性をもつものだと信じています。

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