ごあいさつ

    学部長メッセージ 多文化社会学部長 森川 裕二

    学部長メッセージ

     

    新しい世界像を探求し現実を冷静に分析する
    グローバル世界の理想と現実から目指す人文社会<知>

    日本で唯一、「多文化社会」という言葉を冠にした本学部は、冷戦の終わりを告げたベルリンの壁崩壊からちょうど四半世紀後の2014年4月に、人文社会系グローバル人材の育成を目標に掲げて設立しました。10年の歳月が過ぎようとしています。現代世界は、冷戦終結時に予想したような均一に広がる紛争もなき平穏な楽観的世界ではなく、民族や宗教を中心にした文明圏同士さらに文明内の内なる対立と分裂が一層、際立っています。新型コロナウィルスによって浮彫にされた全地球を覆う変化の片鱗はどのような世界の予兆であったのか。

    私たちは現在、新しい世界の道筋を見出すために、学部名称に理想として掲げた多様な文化が共生する世界像とは全く対照的な現実世界を、読み解く知的な営為が従来以上に求められています。政治学者のE.Hカーは第一次大戦から第二次大戦に至る20年間のヨーロッパの激動を描いた『危機の二十年』(1946)のなかで、「願望は思考の父」といいました。理想を目的に掲げて自由に構想するだけでは何も生み出されず、それは理想ではなく幻想にすぎない。逆に厳しい現実のみに焦点をあてた思考からも何も生まれない。

    さまざまな脅威とリスクに侵食されている世界各地の現状は一様ではありません。アジア、欧州、北米各地域の人々の生活世界への視点が求められています。多文化が共生する社会という新しい世界像を探求し現実を冷静に分析する。本学部はいわば理想と現実の双方を探求するための学部といえます。人文社会科学を領域横断的に、哲学・思想—科学—実践までを一体的に連続して学ぶカリキュラムによって、グローバル世界のニーズに応えうる体制をとっています。グローバル(地球)、リージョナル(国境を跨ぐ地域)、ナショナル(国家)、ローカル(地方社会)の各スケール(ものさし)を複合化した総合的な人文社会科学の知識と、外国語コミュニケーション能力の二つを同時に併せ持つ人間—。人間が生きるための人文社会<知>の獲得が、多文化社会学部の目指す長崎に根差した特色ある教育の探求です。国際公共、社会動態、共生文化の3つの専門理論研究領野を設け専門知識と外国語を系統的に学びます。加えて、留学、海外フィールドワーク・インターンシップなど実践的な学びを通じて高度なコミュニケーション能力と広い視野を培い、世界へと羽ばたいてください。

    一年の計は穀を樹(う)うるに如くは莫く、十年の計は木を樹うるに如くは莫く、終身の計は人を樹うるに如くは莫し。‥‥一樹百穫なる者は人なり。(『管子』)

    この言葉の通りに、多文化社会学の創成も、長崎から新しい世界の価値と文化を創造するグローバルな人材の育成も終身の計として掲げて、新しい世界の在り方について共に考えていきましょう。

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